[開設 06/29/21=MM/DD/YY]
例 7 から見た例 3
配付資料「束」の例 3 は例 7 の特殊ケースである.
直交補空間に関する以前の web 資料でも
述べたように,
G = M = ℝn,
gIm ⇔ g⊥m
とおくと,
I は G = M = ℝn 上の
対称な2項関係なので,
′ : 2G → 2M も
′ : 2M → 2G も
同じ操作になり,
S ⊆ ℝn に対して
S ′ =
{m∊ℝn | ∀g∊S; gIm}
= {m∊ℝn | ∀g∊S; g⊥m}
= S⊥
であった.
また,
G = M と I の対称性より,
BG
=
BM
であることが解る.
このとき,
BG
=
BM
=
Sn
(線形部分空間全体からなる族)
となる.
実際,
任意の S ⊆ ℝn
に対して S⊥ は線形部分空間になるので
(その理由),
S⊥⊥
も また線形部分空間だから,
BG
=
BM
=
{S⊥⊥ | S ⊆ ℝn}
⊆
Sn
である.
一方,
H が線形部分空間のとき H = H⊥ だから,
Sn
=
{H | H は線形部分空間}
=
{H⊥⊥ | H は線形部分空間}
⊆
{H⊥⊥ | H ⊆ ℝn}
=
BG
=
BM
である.
以上から,
BG
=
BM
=
Sn.
H1, H2 ∊ Sn
のとき,
例 3 より (Sn, ⊆) における結びは
H1 ∨ H2
=
H1 + H2
で,
例 7 より (BG, ⊆) における結びは
H1 ∨ H2
=
(H1 ∪ H2)″
=
(H1 ∪ H2)⊥⊥
で与えられ,
今 BG
=
Sn
であるから,
H1 + H2
=
(H1 ∪ H2)⊥⊥
であることが解る.
上限 H1 ∨ H2 のイメージ図
上図では H1 と H2
は ともに 3 次元 Euclid 空間 ℝ3
における 1 次元線形部分空間.
(H1 ∪ H2)⊥
は H1 と H2
に垂直な 1 次元線形部分空間となり,
その直交補空間が (H1 ∪ H2)⊥⊥
であり,
これは H1 + H2 に等しい.
そして,これが {H1, H2}
の上限 H1 ∨ H2 である.
おまけ(発展):閉凸錐
以前のWeb資料
でも見たように,
G = M = ℝn,
gIm ⇔ ‹g,m› ≤ 0
(ただし,‹g,m› は g と m の内積)
とおくと,
I は G = M = ℝn 上の
対称な2項関係で,
′ : 2G → 2M も
′ : 2M → 2G も
極錐を取る操作 S ↦ S∗ になる.
つまり,
S ⊆ ℝn に対して
S ′ =
{m∊ℝn | ∀g∊S; gIm}
= {m∊ℝn | ∀g∊S; ‹g,m› ≤ 0}
= S∗
であった.
このとき,
BG
=
{S∗∗ | S ⊆ ℝn}
(=
BM)
は,
閉凸錐の全体からなる族に一致する.
閉凸錐も極錐と同様に,
凸解析(非線形最適化などに用いられる分野)などに現れる重要な概念である.
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