[開設 07/20/23]
例 13 から見た例 16
配付資料「半順序関係」の例 16 は例 13 と密接な関係がある.
まず,
直交補空間 H⊥
= {x∊ℝn | ∀y∊H; x⊥y}
は,
H が線形部分空間でなくても定義できる——つまり,
H が ℝn の一般の部分集合の場合でも
定義できる——ことに注意されたい.
そして,
H1 と H1 がℝn の一般の部分集合の場合でも,
(∗)
H1⊆H2 ⇒ H2⊥⊆H1⊥
が成り立つ.
このことは,
例 13 の特殊ケースになっている.
実際,
例 13 において,
G = M = ℝn,
gIm ⇔ g⊥m
とおくと,
A⊆G に対して
A′ =
{m∊M | ∀g∊A; gIm}
= {m∊ℝn | ∀g∊A; g⊥m}
= A⊥,
B⊆M に対して
B′ =
{g∊G | ∀m∊B; gIm}
= {g∊ℝn | ∀m∊B; g⊥m}
= B⊥
となる.
よって,
例 13 の証明で示したように
A1⊆A2 ⇒ A2′⊆A1′
であるから,
(∗) が成り立つ.
おまけ(発展):極錐
例 13 の操作は,
数学において,
直交補空間の他にも しばしば現れる.
ここでは,凸解析(非線形最適化などに用いられる分野)などに
現れる概念である極錐について,その定義だけを紹介する.
例 13 において,
G = M = ℝn,
gIm ⇔ ‹g,m› ≤ 0
(ただし,‹g,m› は g と m の内積)
とおくと,
上の直交補空間の場合と同様に,
I は G = M = ℝn 上の
対称な2項関係になるので,
′ : 2G → 2M も
′ : 2M → 2G も
同じ操作になる.
この場合の
S⊆ℝn に対する
S ′ を S∗ と書き,
S の極錐 (polar cone) という.
すなわち,
S∗
=
{ x∊ℝn |
∀y∊S; ‹x,y› ≤ 0}
である.
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