[開設 07/03/23=MM/DD/YY]

集合族の直積

ここでは, 添字付き集合族 {Xλ}λ∊Λ の直積 ∏λ∊ΛXλ を説明する. ここで, Λは, 正の整数の集合に限らない任意の添字集合である.
n 個の集合 X1X2, . . . , Xn の直積 ∏i=1n Xi については既知とする. 知らない者は 「集合の直積」を参照のこと.)

まず, 例から始めよう.
例 1
 X1 = {x1,1, x1,2, x1,3}, X2={x2,1, x2,2}, Λ={1, 2} とし, 写像 f : Λ→ X1X2 で, 条件 f(1)∊X1f(2)∊X2 を満たすものを考える. そのような写像は全部で 6 通りある. 値 f(1) の取り方が |X1| = 3 通り, 値 f(2) の取り方が |X2| = 2 通り なので,3×2=6 通りである. それらの写像を全部 書くと下のようになる.
f1,1(1)=x1,1,     f1,1(2)=x2,1,
f1,2(1)=x1,1, f1,2(2)=x2,2,
f2,1(1)=x1,2, f2,1(2)=x2,1,
f2,2(1)=x1,2, f2,2(2)=x2,2,
f3,1(1)=x1,3, f3,1(2)=x2,1,
f3,2(1)=x1,3, f3,2(2)=x2,2.
これらと X1X2 の直積
X1×X2 = { (x1,1, x2,1), (x1,1, x2,2), (x1,2, x2,1), (x1,2, x2,2), (x1,3, x2,1), (x1,3, x2,2) }
の間に 自然な 1 対 1 対応 が あるのは解かるだろうか?
その 1 対 1 対応は, もちろん
f1,1 (x1,1, x2,1)
f1,2 (x1,1, x2,2)
f2,1 (x1,2, x2,1)
f2,2 (x1,2, x2,2)
f3,1 (x1,3, x2,1)
f3,2 (x1,3, x2,2)
である.
例 1 が解かったら, 一般的な例に進もう.
例 2
 X1X2, . . . , Xn を集合とし, Λ={1, 2, . . . , n} とする. 写像 f : Λ→ ∪i=1n Xi で, 条件 ∀i∊Λ ; f(i)∊Xi を満たすものの全体を P とする. つまり
P = { f | f :Λ → ∪i=1nXi , ∀i∊Λ ; f(i)∊Xi }
である. 例 1 と同様に P と 直積 ∏1=1n Xi の間に 自然な 1 対 1 対応 がある. つまり,
fP に対して, ( f(1), f(2), . . . , f(n) ) ∊ ∏1=1n Xi が対応し,
( x1, x2 . . . , xn ) ∊ ∏1=1n Xi に対して, f(i)=xi (i=1, 2, . . . , n) なる fP が対応
するのである.
数学では, 自然な 1 対 1 対応 があるものどうしは同一視されるので, 上の P も 直積 ∏1=1n Xi と同一視される.
上の例に基づき, 集合族の直積が 次のように定義される.
定義
集合族 {xλ}λ∊Λ直積λ∊ΛXλ
λ∊ΛXλ = { x | x :Λ → ∪λ∊ΛXλ, ∀λ∊Λ; x(λ)∊Xλ }
で定義される (都合上, 写像の記号に f でなく x を用いる). x∊∏λ∊ΛXλ のとき, x(λ) を xλ と書き, xλ 成分 (component) または λ 座標 (coordinate) という. また, x∊∏λ∊ΛXλ を {xλ}λ∊Λ や {xλ}, (xλ)λ∊Λ , (xλ) などとも書く.
例 3
すべての λ∊Λ について Xλ=X のとき
λ∊ΛXλ = XΛ .
右辺は, Λ から X への写像全体からなる集合 XΛ= {x | x :Λ→X} である.
射影も 普通の直積と同様に定義される.
定義
直積 ∏λ∊ΛXλμ∊Λ に対して
prμ( (xλ)λ∊Λ) = xμ
で定まる 写像 prμ:∏λ∊ΛXλXμ を 第 μ 座標への 射影 (projection) という.


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