[開設 07/27/23=MM/DD/YY]

「命題 3 (ℕ, lcm, gcd) と (Dm, lcm, gcd) は 分配束である」の証明

最小公倍数と最大公約数に関する分配律
このページでは, | を整除関係, l, m, n, m′, n′ などは すべて正の整数とし, 簡単のため, 最小公倍数 lcm を ⋎, 最大公約数 gcd を ⋏ で表す. すなわち, mn = lcm{mn}, mn = gcd{mn} である.
次のことは中学または高校で学んでいると思うので, これを証明なしに用いる.
(∗)   m = mg, n = ng とするとき,
mn = g   ⇔   m′⋏n′ = 1
なお, m′⋏n′ = 1 は, m′ と n′ が互いに素 (relatively prime) ということである.
補題 (積に関する分配律)
(lm)⋏(ln) = l(mn).
証明. m = m′(mn), n = n′(mn) とおくと, (∗) より m′⋏n′ = 1 である. このとき, lm = m′[l(mn)], ln = n′[l(mn)] なので, m′⋏n′ = 1 と (∗) より (lm)⋏(ln) = l(mn) である. (Q.E.D.)

(ℕ, ⋎, ⋏) が分配束であることの証明
「分配律と分配束」の 命題 5命題 6 より,
(l ⋎m) ⋏ (l ⋎n) | l ⋎(mn).
を示せばよい. g = mn, m = mg, n = ng とおくと, (∗) より m′⋏n′ = 1 である. l | (l ⋎g) であり, 一方 m′(l ⋎g) は l ⋎g の 倍数だから (l ⋎g) | [m′(l ⋎g)] なので, 推移律より l | [m′(l ⋎g)] である. また, l ⋎gg の倍数であることから m′(l ⋎g) は mg の倍数なので, m = (mg) | [m′(l ⋎g)] である. よって m′(l ⋎g) は {lm} の上界である. そして l ⋎m は {lm} の最小上界だから, (l ⋎m) | [m′(l ⋎g)] となる. 同様に (l ⋎n) | [n′(l ⋎g)] も言える. したがって, 配布資料「束」命題 5 (ii), 上の補題, m′⋏n′ = 1 と g = mn を順に用いて
(l ⋎m) ⋏ (l ⋎n) ≼ [m′(l ⋎g)] ⋏ [n′(l ⋎g)] = (m′⋏n′) (l ⋎g) = l ⋎g = l ⋎(mn).
(Q.E.D.)

(Dm, ⋎, ⋏) が分配束であることの証明
(Dm, ⋎, ⋏) は (ℕ, ⋎, ⋏) の部分束なので, (ℕ, ⋎, ⋏) が分配束であることと 「分配律と分配束」命題 4 より明らか. (Q.E.D.)


付録: 積に関する分配律 その 2
次の分配律も成り立つ.
(lm)⋎(ln) = l(mn)
これを示そう. まず,上の (∗) の拡張
(∗∗)   m = mg, n = ng とするとき,
mn = g   ⇔   m′⋏n′ = 1   ⇔   mn = mng.
(これも中学または高校で学んだはずである) と,
m = mg, n = ng のとき mn = mng 2 であることから, 次の (☆) が解る.
(☆)   mn = (mn)(mn)
(この (☆) も中学または高校で学んでいるかもしれない).
(☆) と上の補題を用いると
(lm)⋎(ln) = (lm)(ln) / [(lm)⋏(ln)]   (∵ (☆))
= (lm)(ln) / [l(mn)] (∵ 上の補題)
= l [mn / (mn)]
= l (mn). (∵ (☆))



「分配律と分配束」命題 3
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