∀x [ M(x) ⇒ P(x) ] ⇔ 「M(x) を満たす すべての x について,P(x) である」
∃x [ M(x) ∧ P(x) ] ⇔ 「M(x) を満たす 少なくとも一つの x が存在して,P(x) である」
は,要は 「M(x) であって かつ P(x) であるような対象 x が少なくとも一つ存在する」ということで, わかりやすいから,この言い換え以外の説明は不要だろう.
∃x [ M(x) ∧ P(x) ] ⇔ 「M(x) を満たす 少なくとも一つの x が存在して,P(x) である」
の解説:
∀x [ M(x) ⇒ P(x) ] ⇔ 「M(x) を満たす すべての x について,P(x) である」
∀x [ M(x) ⇒ P(x) ]とは,
「すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」ということである. 対象領域には, 一般に M(x) を満たす対象と M(x) を満たさない対象があるから, 場合分けすると, 上のことは
「『M(x) を満たす すべての x について,M(x) ⇒ P(x)』 であり,ということになる.
かつ 『M(x) を満たさない すべての x について,M(x) ⇒ P(x)』」
「M(x) を満たさない すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」について考える. 今 考えているのは, M(x) を満たさない対象 x だけなので, M(x) は常に偽である. すると, 条件命題の真理値表より M(x) ⇒ P(x) は真になる. よって,
「M(x) を満たさない すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」は真である.
次に
M(x) P(x) M(x)⇒P(x) T
TT
FT
FF
FT
FT
T
「M(x) を満たす すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」について考える. 今 考えているのは, M(x) を満たす対象 x だけなので, M(x) は常に真である. すると, 条件命題の真理値表より M(x) ⇒ P(x) の真偽は, P(x) の真偽に一致する. よって,
「M(x) を満たす すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」と
「M(x) を満たす すべての x について,P(x)」とは同値になる.
「すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」が
「M(x) を満たす すべての x について,P(x)」と同値になることがわかる.
∀x [ M(x) ⇒ P(x) ] | ⇔ | 「すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」 |
⇔ | 「M(x) を満たす すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」 | |
∧ 「M(x) を満たさない すべての x について,M(x) ⇒ P(x)」 | ||
⇔ | 「M(x) を満たす すべての x について,T ⇒ P(x)」 | |
∧ 「M(x) を満たさない すべての x について,F ⇒ P(x)」 | ||
⇔ | 「M(x) を満たす すべての x について,P(x)」 | |
∧ 「M(x) を満たさない すべての x について,T」 | ||
⇔ | 「M(x) を満たす すべての x について,P(x)」 ∧ T | |
⇔ | 「M(x) を満たす すべての x について,P(x)」 |
「M(x) を満たす すべての x について,P(x) である」の否定,つまり この言明がウソになる場合を考えると, それは
「M(x) を満たす 対象 x で,P(x) でないものが存在する」ときである. このページの一番上に書かれているように, この主張は,
∃x [ M(x) ∧ ¬P(x) ]だから, この論理式の否定をとれば, 二重否定律より, もとの
「M(x) を満たす すべての x について,P(x) である」を表す論理式が得られるはずである. では, この方針で始めから変形を行なってみよう.
「M(x) を満たす すべての x について,P(x) である」 ⇔ ¬¬「M(x) を満たす すべての x について,P(x) である」 ⇔ ¬「M(x) を満たす 対象 x で,P(x) でないものが存在する」 ⇔ ¬ ∃x [ M(x) ∧ ¬P(x) ] ⇔ ∀x ¬[ M(x) ∧ ¬P(x) ] (∵ de Morgan 律) ⇔ ∀x [ ¬M(x) ∨ ¬¬P(x) ] (∵ de Morgan 律) ⇔ ∀x [ ¬M(x) ∨ P(x) ] (∵ 二重否定律) ⇔ ∀x [ M(x) ⇒ P(x) ] (∵ 条件命題の選言表現)
∀x [ M(x) ⇒ P(x) ]の形の限定命題は, 特に「変域の制限」を意識しない場合でも 非常によく使われる. そして, 日常言語では
∀x [ M(x) ⇒ P(x) ]は
「(すべての)M は P である」 とか 「M ならば P である」などと表現される.
「すべての x について, x がヒトである ならば x は動物である」ということで, 変域の制限を意識すれば,
「すべてのヒト x について, x は動物である」と表現できる. これは,日常言語では ふつう
「すべてのヒトは動物である」と表現されるが, もっと一般には
「ヒトは 動物である」 とか 「ヒトならば 動物である」などと表現される.