Gf = { ( x, f(x) ) | x∊X } ( = { ( x, y ) | x∊X, y = f(x) }).f の定義域も値域も実数の集合のとき, Gf を 2 次元座標に描いたものが, 通常の関数のグラフである.
(∗) 写像 f と そのグラフ Gf は 1 対 1 対応の関係にある.
写像 f から,そのグラフ Gf は上の式によって 定まるが, グラフ Gf から 写像 f を 再構成できる. まず, f の定義域は
{ x | ∃y s.t. (x, y)∊Gf }である. 上の集合を Dom(Gf) と書く. グラフの定義から, 定義域 Dom(Gf) の各要素 x に対して,
y = f(x) ⇔ ( x, y ) ∊ Gfが言えるので, f の値もグラフ Gf からわかる(これは 2 次元座標上の通常の関数のグラフから, x に対する f の値を読みとるのと同じことである).
と定義されるのである. つまり, 集合 X から集合 Y への写像は, 条件「∀x∈X ∃! y∈Y s.t. (x, y)∈f」 を満たす, X から Y への特殊な関係なのである. そして, f が写像のとき, x∈X に対して, ( x, y ) ∊ f を満たす一意的な y を f(x) と書く. このとき,f が X から Y への写像である ⇔ f ⊆ X × Y かつ ∀x∈X ∃! y∈Y s.t. (x, y)∈f (∗)
( x, y ) ∊ f ⇔ y = f(x)である.
であるから, h=f ∘ g である. つまり, 合成写像 g ∘ f と 合成関係 f ∘ g は同じものなのである. 写像と関係では 合成の書き順が逆になっているのである.
(x, z)∊f ∘ g ⇔ ∃y∊Y s.t. (x, y)∊f ∧ (y, z)∊g ⇔ ∃y∊Y s.t. y = f(x) ∧ z = g(y) ⇔ z = g(f(x)) ⇔ z = h(x) ⇔ ( x, z ) ∊ h
なぜ
こんなややこしいことになっているかというと,
私見だが,
写像が関係の特殊ケースだと発見されたのが
つい最近で,
それまでは
写像と関係は別のものとされていたからではないかと思う.
それぞれの記法としては,
関係は
x R y,
y S z
と書くので,
合成を
x (R ∘ S) z
と書くのは自然だし,
写像も
f(g(x))
を
f ∘ g (x)
と書くのは自然なのだから.
例えば,
はじめから写像の方で,
f(x)
を
x f
と書いていれば,
合成も
x f g
と書けて,
書き順が関係の場合と一致したのだが,,,
(なお,現代数学では,
合成写像 f ∘ g を
fg と書く場合があり,
また,
f(x)
を
x f
と書く研究者もいる.)
∀y∊Y ∃!x∊X s.t. (y,x)∊f −1 ⇔ ∀y∊Y ∃!x∊X s.t. y=f(x)となり, f が X から Y への写像であることに注意すると, 上式右辺は f : X→Y が全単射であることを意味していることが解るからである. また,このとき,逆関係 f −1 は 逆写像 f −1 に一致する. なぜなら, 任意の x∊X, y∊Y について
だからである.
y=f(x) ⇔ (x,y)∊f (∵ f は関係であるから) ⇔ (y,x)∊f −1; (∵ 逆関係の定義) ⇔ x=f −1(y) (∵ f −1 は写像でもあるから)