[開設 07/03/23=MM/DD/YY]
原子と余原子
原子
最小元 0 を持つ半順序集合 (X, ≤) において,
X∖{0} の
極小元を 原子 または 原子元 または アトム (atom) という.
下の例から,
X∖{0} の
極小元が原子と呼ぶに相応しいことが解るだろう.
原子は,Boole代数において重要な役割を果たす.
例1
-
Xを集合とするとき,
順序集合 (2X, ⊆) の
最小元は空集合 ∅ であり,
原子の全体は 1 要素集合の全体に一致する.
例2
-
整除関係 ≼ に関する
順序集合 (ℕ, ≼) を考える.
このとき,
最小元は 1 であり,
原子の全体は素数の全体に一致する.
例3
-
Sn を n 次元 Euclid 空間 ℝn の
線形部分空間全体からなる族とする.
順序集合 (Sn, ⊆) の
最小元は 0 次元空間 {0} であり,
原子の全体は 1 次元線形部分空間の全体に一致する.
原子の双対概念(7月10日の授業「半順序集合」参照)を余原子という.
余原子は原子ほど重要な概念ではないが,
ついでに説明しておこう.
余原子
最大元 1 を持つ半順序集合 (X, ≤) において,
X∖{1} の
極大元を 余原子 または 余原子元 または コアトム (coatom) という.
例4
-
Xを n 要素集合とするとき,
順序集合 (2X, ⊆) の
最大元は全体集合 X であり,
余原子の全体は n−1 要素集合の全体に一致する.
例5
-
整除関係 ≼ に関する
順序集合 (ℕ, ≼) は,
最大元を持たないので,余原子も持たない.
例6
-
Sn を n 次元 Euclid 空間 ℝn の
線形部分空間全体からなる族とする.
順序集合 (Sn, ⊆) の
最大元は 全空間 ℝn であり,
余原子の全体は n−1 次元線形部分空間の全体に一致する.
なお,
n−1 次元線形部分空間は超平面と呼ばれる.
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